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 トップページ > 調査研究コラム > #073 琥珀製棗玉の穿孔方法について―遺物観察ノートより3― (2019.02.08)

 
 このコーナーでは、職員が行った調査研究の成果について掲載しています。

#073 琥珀製棗玉の穿孔方法について―遺物観察ノートより3― 福田 秀生 

1 はじめに
 琥珀製玉類は古くから縄文時代から出土することは知られ、特に古墳時代の装身具として日本各地で数多く出土している。さらに琥珀の産地として岩手県久慈、福島県いわき、千葉県銚子で産出されるという。古墳時代の琥珀製玉類を分析する池上悟によれば、琥珀製玉類は日本全国で出土するものの、関東地方特に千葉県に出土例が多く、琥珀の産地に比較的近い東日本に出土例が多いとされる。このように琥珀製玉類の研究においては、玉の形状分析のほかに産地同定による分布傾向を分析する研究が見られるものの、玉そのものの製作方法に関する研究が少ない傾向にある。
 本稿では、平成10年度に当財団が発掘調査を実施した矢吹町弘法山古墳群の横穴墓から出土した琥珀製棗玉を観察し、紐通し孔の穿孔方法を検討する。観察ポイントとしては、棗玉の小口面において紐通し孔と重なる小口径の貫通していない孔(盲孔)が観察される点である。

2 琥珀製棗玉の形状的特徴
 琥珀は太古の樹液などが石化したもので、昆虫が内部に封入された例などは有名である。古墳時代には琥珀色に輝く宝石として装身具などに用いられており、多くは棗玉として、その他に勾玉・切子玉の出土例も知られている。また、非常に珍しい例としては、奈良県竜田御坊山3号墳から出土した琥珀製石枕などはあまりに有名である。
 図1には矢吹町弘法山古墳群7号横穴墓から出土した琥珀玉を図示した。これらは大きさが様々であるものの、小口面を上下とした場合、中央部に最大幅をもち、上下の小口面に向かってすぼまる特徴があり、全体的に細長い形状となる。棗玉の横断面を観察すると、不整な楕円形や隅丸方形を基調とするものが顕著であるが、その大きさや形状に企画性に乏しく、琥珀原石の角を落とした程度の整形との印象がある。一方、小口面は平坦に整えるものが多い。これは装身具として紐に連ねるときの見栄えのためでもあろうが、形状を安定的に保持できるように整え、紐通し孔の穿孔を容易にするためと推察される。
 棗玉の製作痕跡は、表面の風化が顕著で、研磨痕跡は不鮮明である。他の石材を用いた玉類と同様に砥石などを用いるのであろうが、製作工房跡などが知られていないため不明な点は多い。

3 琥珀製棗玉の穿孔方法
 図1に示した琥珀製棗玉の紐通し孔を観察すると、小口面では紐通し孔の形状は円形で、長さが2㎝以下の比較的小型品は直径2~3㎜、長さが2㎝以上の棗玉では直径4~5㎜を測る。穿孔方法は断面図に示すように、上下の小口面からそれぞれ穿孔し、孔の直径は小口面から中央部に向かって細くなる特徴がある。さらに紐通し孔が上下でそれぞれ斜めになり中央付近で貫通しているのが観察できる。紐通し孔の観察から判断すれば、先尖げとなる錐状工具を用いて上下小口面の2方向からの穿孔であろう。具体的な方法は検討を要するが、いわゆる舞錐で研磨剤を用いた穿孔が容易と考えられる。
 ここで図1に示す大型品となる琥珀製棗玉の紐通し孔に着目し、その穿孔方法を検討する。上下小口面に認められる直径5㎜前後の紐通し孔に重なるように、直径2㎜前後の小孔が確認できる。
紐通し孔内部の観察から、以下の点が特徴的である。①紐通し孔に削られて小孔が約半分遺存する。紐通し孔を舞錐で穿孔する際には小孔が既に開けられている。②小孔の肉眼観察では、棗玉の小口面から1㎝ほど内部まで直径を減じることなく穿孔され、その形状は紐通し孔のように小口面から先端に向かって細くなる点とは異なる。③上下小口面の小孔は、それぞれ穿孔方向がわずかに異なり、貫通していない可能性が高い。
以上の点から、小孔は紐通し孔の穿孔に先んじて開けられた痕跡と理解でき、舞錐の先端がずれないようにすることを目的としていると推察される。次に小孔の穿孔方法については、紐通し孔のように錐状工具を用いた場合、穿孔が進むにつれて、小口面の口径が広くなることは想像に難くない。現状で観察される細い孔にはならない。紐通し孔に用いる工具よりも細い針状工具と復元できる。
 ここで琥珀の特性に言及してみると、琥珀は植物質樹脂であり、150℃で軟化し、200~300℃で溶けるとされる。針状工具の先端を熱し、棗玉の上下の小口面から押し当てれば琥珀が溶けて孔が開くと考えられる。さらに小孔の目的を勘案すれば、棗玉を貫通させる必要はないため、針状工具の長さも1㎝前後のものと復元できる。
紐通し孔の穿孔で完全に小孔が失われているものがほとんどであるが、琥珀の特性を考えれば小孔がある可能性を指摘しておきたい。

4 おわりに
 琥珀製棗玉の観察からその穿孔方法の検討を試み、熱した鉄針を用いて孔を開ける可能性を指摘した。近年、玉類の紐通し孔にシリコンを充てんし、これを観察して穿孔に用いた工具痕跡を分析する方法が散見できる。従来まで観察が困難であった部分を観察でき、玉類の製作痕跡を復元できる良好な手段となる。今後ともこうした観察と新たな知見を収集するとともに、復元実験に着手していきたいと考えてといる。


図1
弘法山古墳群7号
横穴墓出土琥珀玉


写真1
横穴墓出土琥珀玉 

<図版・写真掲載文献>
福島県文化センター 1999年 福島県文化財調査報告第369集「弘法山古墳群」
『あぶくま南道路遺跡発掘調査報告8』

        
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