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 トップページ > 調査研究コラム > #045 石材調査について(2016.8.5)

 
 このコーナーでは、職員が行った調査研究の成果について掲載しています。

#045 石材調査について 山田 和史

 遺跡から出土した石器石材の採取地はどこか。これを特定できれば、過去の狩猟採集民の移動・行動領域の復元の手掛かりとなる。採取地を特定するには石材調査が必要となる。石材産地が判明すれば、その獲得や消費の戦略を明らかにすることができる。ごく最近では新潟県や秋田県で地道な踏査により珪質頁岩の露頭が確認された事例があり、今後の石材研究の進展が期待される。

 石材調査の最終目標は石材資源環境の復元にあり、さらに遺跡出土の石材がどこから採取されたかを追求することが課題となる。アプローチの仕方にはいくつかある。岩石種を特定せず、河川流域を網羅的に調査する場合と、岩石種を特定して探す場合である。前者は河川流域にどのような岩石種がどの程度含まれているかを把握するのに有効である。地点ごとに1m×1mなど任意のグリッドを組んで、その範囲に含まれる礫を全点サンプルとして持ち帰れば、定量的なデータが得られる。後者は河川流域に分布しているか否か、分布しているとすればその供給量や質、形状を把握し、さらに一次産出地である露頭を探索する。露頭を発見することができれば、出土した石器石材の始点と終点が捉えられ、遺跡への移動の経路を想定する際の重要な情報となる。

 採取地点を特定するため、礫面が残る石器と石材調査で得られたサンプルとを比較する。礫面とは自然の状態にある石の表面のことであり、他に原礫面、原石面、外皮、外殻、コーテックスなどと呼ばれる。礫は、もともとは一次産出地(原産地)である岩体中に含まれているが、岩体が露出した部分(露頭)から崩落し、河川で岩体が削られることで、一次産出地(原産地)を離れていく。現在、河原で見る石の多くは、河川の営力により運ばれてきたものである。礫は河川に運ばれることでその形状が変わっていく。この礫の変化の形状を示したのが Krumbeinの「円磨度印象図」(図1)である。Krumbeinは円磨度を9段階に分け、これをもとにPettijohnは角(angular、円磨度 : 0~0.15)、亜角(subangular、円磨度 : 0.15~0.25)、亜円(aubrounded,円磨度 : 0.25~0.40)、円(rounded、円磨度 : 0.40~0.60)、十分に円磨(well-rounded、円磨度 : 0.60~1)の5段階に分類した(Pettijohn 1957)。

図1  Krumbeinの円磨度印象図(Krumbein1941)

 たとえば、川の上流域に原産地が存在する礫を想定した場合、角礫~亜角礫は原産地付近もしくは上流域、亜角礫~亜円礫は中流域、亜円礫~円礫は中流域~下流域、円礫~超円礫は下流域~河口付近に分布することになる。岩石種によってその程度は異なるが、遺跡で出土した石器に礫面が残されている場合は、その円磨度を観察することで、流域のどの辺りから採取してきたものかなど、ある程度の推測が可能である。

 以上のように、石材調査の方法を述べてきたが、注意点もある。それは自然および人為による地形の変化である。過去のある時点では露出していた岩体も、大規模な地すべりによる埋没や長い年月の侵食による岩体の消滅、あるいは礫を供給していた水系そのものが地すべりにより堰止められたり、埋没していたりする可能性がある。また、人為による改変では上流域のダム建設や、護岸工事、土砂採掘などにより河川に供給される岩石種の変化やその供給量に大きな変化がもたらされる。石材調査ではそれらの可変を加味する必要がある。とはいえ、開発がそれほど及んでいない地域では、大局的には影響しないと考える。また、火成岩である黒曜石のように局地に限定される産出状況と、堆積岩のように岩体が広範囲に存在する産出状況とでは原産地の考え方も異なってくる。前者は特定の地理環境に限定されるので原産地と呼べるが、後者は岩体が広域にわたるため、あくまで分布域と考えるのが妥当である。

 なお、石器にはしばしば特定の石材が使用される場合がある。これには、石の性質や色調による「志向性」が存在しているといえよう。つまり「志向性」とは、エトムント・フッサールの現象学用語で、「意識は常に何者かについての意識であること」を表すのである。

福島県会津盆地の

石材調査の様子

 

採取した石材

【参考文献】
・中村由克2015「珪質頁岩の産地と採集地の研究法」『第29回東北日本の旧石器文化を語る会予稿集』、85-88
 頁
・山田昌功2012「石材産地研究に関するノート-ヨーロッパの後期旧石器時代を素材に-」『資源環境と人類』
 第2号、37-48頁、明治大学黒曜石研究センター
・吉川耕太郎2015「秋田県域の珪質頁岩の調査状況」『第29回東北日本の旧石器文化を語る会予稿集』、89-94
 頁
・C.Gamble,1999,THE PALAEOLITHIC SOCIEIES OF EUROPE, by CAMBRIGE.(田村隆訳2001『ヨーロッパ
 の旧石器社会』、同成社)
・Krumbein, W. C. 1941 Measurement and geologic significance of shape and roundness of sedimentary
 particles.J. Sed. Petrol., 11, 64-72.
・Pettijohn,F.J.1957 SEDIMENTARY ROCKS, second edition, Harper and Brothers, New York.


 

 

        
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